7.包括的人権と法の下の平等 7−1 生命・自由・幸福追求権       13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉       に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 1.幸福追求権の意味  *13条から具体的権利(新しい人権)を導き出すことは可能か。   →通判)個人尊重の原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な       権利である。結果、13条は補充的意味のみを持つ。この幸福追求権によって基礎づけられるここの権利は、   裁判上の救済を受けることができる具体的権利である。   r.社会の状況変化とともに、現実に生命・自由などについて、個別的人権規定では救済できない新しい侵害  態様が生じている。 2.新しい人権  (1)新しい人権の一般的基準   *幸福追求権の中身をいかに解すべきか。新しい人権として承認されるかどうかをどのような基準で判断するか。A    →人格的利益説(通説):幸福追求権は個人の人格的生存に不可欠な権利・自由を包摂する包括的な権利であり、憲 法上の人権と言えるかどうかは、それが個人の人格的生存に不可欠であるかで判断する。  r.新しい人権について無制限に裁判所が承認することになると、裁判所の主観的な価値判断によって権利が創       設される恐れが出てくる。新しい人権を認めることは他者の人権との衝突を招来することになり慎重に行なう   べきである。人権のインフレ化を防ぐためには個人の人格的生存にとって不可欠である場合に限るべきである。     一般的自由説:広く一般的行為の自由に関する自己決定についても、憲法上の人権と考えるべきである。  (2)プライバシーの権利   *プライバシー権の内容はいかに解すべきか。A    →自由権的側面に限る説:プライバシーの権利とは、私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利である。 自由権的側面+請求権的側面も含める説(通説):自己に関する情報をコントロールする権利である。   *自己の情報について閲読したり、訂正したり、抹消を求める権利がプライバシー権として保障されているか。    →具体的な法律の根拠規定がなくても認める。r.生存権等とは異なり請求の内容は一義的である。   *違憲審査基準の程度。     →厳格な審査基準で判断をすべきである。  (3)自己決定権    子供を持つかどうかなど家族のあり方を決める自由    ライフスタイルを決める自由    医療拒否の自由    髪型・服装の自由    *学校による生徒の髪型の規制は、いかなる基準のもとで許されるか。B   → 重要な教育目的があること、 規制がそれと実質的な事実上の合理的関連性があること、を要する。 7−2 法の下の平等       14条  すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又     は社会的関係において、差別されない。    華族その他の貴族の制度は、これを認めない。        栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来こ      れを受けるものの一代に限り、その効力を有する。 1.平等権と平等原則    平等権‥個人の側から捉えた場合の人権   {平等原則‥国家の側から捉えた場合の原則 2.法の下の平等の意味と内容  (1)法内容の平等   *「法の下に」の法とはどのような意味があるか。A    →立法者非拘束説(法適用平等説):法の下の平等とは、法適用における平等を意味し、立法権を拘束しない。 立法者拘束説(法内容平等説)(通説)  :法の下の平等は、法の適用の平等だけではなく法の内容における平等をも意味するから、立法権をも拘束する。   r.法の支配の観念からすると当然である。法の内容に不平等な取り扱いが定められていればいかにそれを平      等に適用しても平等の保障は実現されず、個人尊厳の原理が無意味に帰する恐れがある  (2)相対的平等    絶対的平等…個人的差異を無視して機械的に均一に扱う。   {相対的平等…同一事情、同一条件のもとでは均等に扱うが、そうでない場合には違う扱いをすることも許す。  (3)形式的平等    形式的平等…前提条件を平等にすることで足りるとする。   {実質的平等…格差是正を国家が介入することを積極的に認める。  →14条によって現実の経済的な平等の実現を請求できることになる。   *14条の「平等」のうちに、単なる形式的な平等を超えて、国家権力による実質的な平等の実現を読む込むべきか。    →否定説(通説):「平等」とは、法の取り扱いの平等といういわば形式的な平等である。    r.経済的不平等の是正を国に請求する権利は社会権の保障で実現されるべきで、14条では実質       的平等の理念からくる相対化の要請を相当程度まで受容することが予定されているのみである。 肯定説(長尾):「平等」とは単なる形式的・静態的な平等を超えて、国家権力による実質的な平等をいう。    r.福祉国家・社会国家の理念は実質的平等を要請する。   ・積極的差別解消措置(affirmative avtion)    …人種や性などを考慮して一定数の特別枠を設け、教育や雇用の機会などを優先的に与えようとする措置。 3.違憲審査基準  *平等権の違憲審査基準はどのように考えるべきか。A   →芦部) 14条1項後段の列挙事由による取扱上の差異が問題となっている場合→厳格な審査基準    列挙以外の事由(財産・学歴・年齢等)による取扱上の差異が問題となっている場合→厳格な合理性の基準      列挙以外の事由で経済的自由の消極目的規制の場合→厳格な合理性の基準    列挙以外の事由で経済的自由の積極目的規制の場合→合理的根拠の基準 による。  目的 手段   厳格審査基準  必要不可欠 必要最小限度   厳格な合理性の基準  重要 目的との実質的関連性   合理的根拠の基準  正当 目的との合理的関連性 4.平等の具体的内容  (1)人種による差別…皮膚や髪や目や体型など身体的特徴によって区別される人類学上の種類による差別  (2)信条による差別…宗教的な信仰を初め、いわゆる世界観による差別  (3)性別による差別    性別による差別が 形式的平等に関わる場合には厳格審査基準、    {実質的平等達成のための差別の場合は、厳格な合理性の基準で判断すべきである。  (4)社会的身分   *社会的身分とは何か。D→通説)広義説:広く人が社会において一時的ではなく占めている地位    *尊属殺重罰規定(平成7年改正前刑法200条)は平等原則に反しないか。D      →判例)尊属に対する尊重報恩という道義を保護するという立法目的は合理的であるが、手段が不合理である。 通説)立法目的自体が違憲であって、刑を加重すること自体が不合理な差別に当たる。   *非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1である(民法900条4号但書)ことは平等原則に反しないか。D      →判例)目的は法律が法律婚をとっていることの関係で嫡出子の立場を尊重し、なおかつ非嫡出子を保護するところ にある。手段もその目的に照らして、相当で、この規定は合憲である。(合理的根拠の基準の採用) 佐藤幸)厳格な合理性の基準によって判断されるべきである。法律婚制度の維持という目的はいいが、それとこの  手段との関係に実質的関連性はなく、違憲である。  (5)門地による差別…血統や家柄等による差別  (6)その他の事由による差別  学歴・職業・財産・年齢・地域   *投票価値の平等は憲法上保障されているか(議員定数不均衡問題)。    →判例)法の下の平等の当然の要請として保障されている。    r.法の下の平等は、選挙権に関しては、国民の政治的価値において平等であるべきとする、徹底した平等   化を指向するものであり、各選挙人の投票の価値の平等も憲法の要求するところである。   *投票価値の平等が憲法上の原則であるとして、許容される最大格差はどの程度か。A    →通説)一票の重みが議員1人当たりの人口の最高選挙区と最低選挙区とで、2対1以上に開くことは、投票価値の 平等の要請に反する。   *衆議院と参議院で差があるか。D    →判例)参議院の地域代表的性格という特殊性から5倍以上の格差を合憲とする。 通説)全国民の代表たる性格は衆議院と参議院で変わりなく、同じく2対1以上の格差は違憲とすべきである。   *地方議会議員選挙において定数配分不均衡が生じている場合にどのように判断するか。D    →通説)人口比例が原則であり、国会と同様な基準で判断すべきである。    判例の議員定数不均衡問題への対処 合理的期間論…不平等状態が生じて、それが合理的期間内に是正されないときに初めて違憲という判断がなされる。 配分規定全体が違憲となる。 選挙無効の訴え(公選法204条)で争われる。 統治行為論は採らない。r.統治行為は民主制の過程で解決できる問題は民主制によって解決すべきとするものだ   が、この場合にはそもそも民主制に瑕疵がある場合であり裁判所に頼らざるを得ない。 事情判決の法理を採る。選挙を無効とせず、違法の宣言にとどめる。 5.貴族制度の廃止と栄典の授与   14条  華族またはその他の貴族の制度は、これを認めない。」   14条  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、または将来 これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。」